亜衣の誤解はすぐ解けた。ついでにメイド服のサイズが合っていないところを実際に見てもらう。
「ファスナーが閉まらないくらい良くない~?」
「背中が出ちゃうの! それ以前に、肩より上に腕を上げようとすると破れそうになるんだってば」
縫い目が音を立てて軋む様子を見て、亜衣もようやく納得してくれた。
「昔は同じ服着れたのにねぇ」
「それ小学校の頃の話だよね」
「今もあんまり変わらなくない?」
「身長も体重も違うだろ」
僕たち双子は小学生時代、母さんの趣味で全く同じ服を着ていた。見分けがつかないとクラスメイトや先生からよく言われたものだ。
「亜衣、迅堂くんは?」
「今日はバイトの日~」
「ああ、月曜だもんね」
迅堂くんにメイド服姿を見られなくて助かった。
「土佐辺くんも女装するの?」
「当然。全員参加だからな」
「うわ見たい! 絶対遊びに行く」
僕がメイド服から部屋着に着替えてる間、亜衣は土佐辺くん相手に談笑していた。我が妹ながら、ホントに物怖じしないヤツだ。
「服は決まってるの?」
「姉貴から借りる」
「どんな服?」
「文化祭までナイショ」
なんと、土佐辺くんは既に衣装を決めたらしい。僕より背が高くてがっしりしているのに着られる服があるんだろうか。
「うちの姉貴、学生時代バレー部でさ。身長がオレとほぼ変わらないんだよ。だから大抵の服は着れる」
土佐辺くんのお姉さん、きっとスラッとしてカッコいいんだろうな。