家に着く頃には真っ暗になっていた。玄関には亜衣と迅堂くんの靴がある。迅堂くんが階段を駆け下りてきて、自分の家なのに思わず廊下の端に寄って通路を開ける。

「もう帰るの?」
「ん」

 スニーカーに乱暴に足先を突っ込み、迅堂くんは慌ただしく玄関から出て行ってしまった。あんなに不機嫌そうな彼は見たことがない。ケンカでもしたのだろうか。

「亜衣、入るよー」

 ノックしてから亜衣の部屋に入ると、亜衣はこの前と同じようにベッドの上で膝を抱えていた。間違いない、何かあったんだ。

「どうした。ケンカした?」

 声を掛けると亜衣はバッと顔を上げ、「あんなヤツ、もう別れてやる!」と叫んだ。