週明けの月曜。今朝も駅のホームで土佐辺くんと一緒になった。先日貸した小説の話をしながら電車に乗り、学校へ向かう。

 中間テストも無事終わったし、そろそろ文化祭の準備に本格的に取り掛からなくてはならない。他校の文化祭を見にいったおかげで何をするべきかが分かった気がすると伝えると、土佐辺くんは「さすが相棒」と嬉しそうに笑った。

 ごめん土佐辺くん。
 僕は不安を紛らわせたいだけなんだ。
 クラスのためじゃなくて自分のため。
 これも知られたら呆れられるのかな。

 午前の授業は全然頭に入ってこなかった。ぼんやりし過ぎて先生に注意され、みんなに笑われたりした。

「安麻田くん、体調が悪いのかい?」
「ううん、別に」
「朝から『心ここに在らず』に見えるが」
「……」

 昼休みに駿河くんから指摘された。視線を落とせば、机の上には今食べてるサンドイッチの具がボロボロと散らばっている。相当ぼんやりしてたみたい。

「ごめん、考え事してて」
「文化祭の件か? 忙しいなら俺にも仕事を振ってくれて構わないが」
「あ、いや、うん。でも……」

 どうやら駿河くんは僕が実行委員の仕事に追われて疲れ果てていると思ったようだ。まだそこまで忙しくないし、考えていたのは別件だ。心配を掛けて申し訳なく思う。

「そんじゃ、ひとつ頼まれてもらおっかな」

 いつから聞いていたのか、土佐辺くんが割り込んできた。手には数枚の書類を持っている。

「各班の経費の試算なんだけど」
「ふむ、いいだろう」

 書類には各班に割り当てられた予算と購入予定の品物や個数などが箇条書きで書き出してあった。飲食の販売価格や売り上げ目標などの項目もある。

 駿河くんは書類を受け取ると、すぐに自分の机に戻って計算を始めた。空いた席に入れ替わりで土佐辺くんが座る。