校内の展示を見て回った後、校庭に出た。タコ焼きや焼きそば、わたあめ、ポップコーンなどの屋台が並んでいる。時間はいつのまにか午後一時を過ぎていた。さっき軽く食べたとはいえ、おなかが空いている。

「迅堂くん、焼きそばが美味しいって言ってたよね。どこだろ」
「生徒会の屋台だっけ。あれか?」

 正門から入ってすぐという一番立地が良い場所に立つ屋台を見つけ、土佐辺くんが指をさした。他の屋台とは明らかに店構えから違う。しかも長い行列が出来ている。

「市内の製麺所から麺を直送してるらしいな。他の材料も産直スーパーから仕入れてるのか」

 屋台の周りに立っているのは、件の製麺所やスーパーの(のぼり)と立看板だ。宣伝をすることで仕入れ価格を下げてもらい、安く提供できるのだろう。そういった交渉も生徒会という信頼があるから成り立つものだ。

「焼きそば、オレが並んで買ってくる」
「僕も行くよ」
「二人で並んでも仕方ないだろ。安麻田は他に美味そうなもんあったら買っといて」
「う、うん。わかった」

 待ち合わせ場所を決めて二手に別れる。焼きそば以外の食事代わりになりそうな食べ物はフランクフルトくらいか。こちらも列が出来ていたが、焼きそばの屋台に比べれば少ないものだ。少し並んで二本購入し、ついでに近くの自販機で飲み物も買う。

 土佐辺くんのほうを見れば、まだまだ順番は来なさそうだった。待ち合わせ場所の正門前に建つ校長の銅像近くにあるベンチに座って待つ。

 スマホの画像フォルダを見返せば、今日撮った写真が何枚もあった。亜衣のメイド服姿や写真の掲示板、カフェコーナーでクッキーを食べる土佐辺くん。精密なジオラマ。中でも、白い浴衣姿の迅堂くんが撮れたのが一番の収穫だった。お化け屋敷の驚かし役をしている最中に廊下に出てきてくれるとは思わなかった。

「お化け屋敷、面白かったなぁ」
「それはどーも」
「えっ!?」

 急に間近で声が聞こえ、顔を上げると、目の前には迅堂くんが立っていた。流石に今は浴衣姿ではなくジャージを着ている。

「あれっ、どうしたの。お化け屋敷は?」
「係を交替して今から昼休憩! 食いモン買ったらすぐ戻らなきゃなんないけどな」
「そうなんだ」

 話しながら、さりげなくスマホの画面を暗くする。彼の写真を見ていたの、バレてないかな。なんだかドキドキする。