お化け屋敷を後にした僕たちは校内を回ることにした。

「二人ともチケット貰えるなんてね」
「ホントにな」
「ふふ、土佐辺くんがあんなに大声出すなんて」
「仕方ないだろ、いきなり冷たいコンニャクを顔面にブチ当てられたんだぞ!」

 確かに、プロジェクションマッピングという高度な技術が使われた後に古典的なトラップが来るのは意外だった。

 いま思えば、迅堂くんはワザと土佐辺くんを狙い撃ちしたのだろう。途中まで間接的な仕掛けばかりだったから、直接何かしてくるとは僕も予想していなかった。出口直前の油断した時にやられたから尚更だ。

「近場から回るか」
「すぐそこにカフェコーナーがあるよ」
「お、いいな。参考になりそう」

 パンフレットを見れば、校庭だけでなく校舎内にも飲食系の店が幾つかあった。メニューや看板、内装などを見ておきたい。あと、悲鳴をあげたせいで喉が渇いている。

「いらっしゃいませー!」

 立ち寄ったのは普通の教室でやっているカフェだった。昼前だからまだ空席が多い。会議室にあるような長机がテーブル代わりになっている。三種類のメニューがあり、ドリンクとフードがセットで、どれも手頃な価格設定だ。一つずつ注文してから席に着く。

「メニューがシンプルでいいね」
「種類が多いと準備も大変だからな」
「これならウチも出来るかなあ」
「写真撮っとくか」

 運ばれてきたジュースとフードを僕の前に置き、土佐辺くんはスマホを構えた。

「ちょっと、僕まで映っちゃうよ」
「いーじゃん。記念記念」
「恥ずかしいんだけど」

 これも自分たちの出し物に活かすため、と無理やり笑顔を作って大人しく撮られる。

 ジュースは紙コップ、フードは紙皿に乗せられている。土佐辺くんはコーラとクッキー、僕はオレンジジュースとプチパンケーキ。クッキーは手作りだけど、多分前日に作り置いたものだろう。プチパンケーキは注文を受けてからその場で焼いていた。ホットプレートを使ったメニューは参考になる。小さく薄く作ればすぐに焼けるから、これは積極的に真似したい。

 土佐辺くんはさりげなく在庫置き場や調理してる生徒たちの写真を撮っている。僕もメニュー表や内装を撮った。