「それにしても、おまえらそんなに仲良かったのかよ。知らんかったわ」
「え?……あっ」
指摘されて、手を繋いだままだったことに気付いた。あんなに驚いていたのに、土佐辺くんは僕の手を振り解かず握ったままにしていたのだ。よりによって迅堂くんに見られてしまうなんて、なんか複雑。すぐに慌てて手を離す。
「ハイッ、じゃあ記念撮影をしまーす! 計測器の数字が見えるように持ってね!」
廊下に出ると、亜衣がデジタルカメラを手に待ち構えていた。そうだ、記録保持者は写真を廊下に飾られるんだった。
「ホントは一人ずつ撮るんだけど、同じ数値が出るなんて珍しいから一緒に撮ろっか!」
なんと、土佐辺くんとツーショット。壁を背に並ばされ「笑って笑って」と催促される。隣を見れば、土佐辺くんは苦笑いを浮かべていた。僕も引きつった笑顔で計測器を持つ。
「その場でプリントアウトするんだな」
「小型プリンタがあるからね~。便利でしょ」
いま撮ったばかりの写真はすぐに印刷され、日付と時間、僕たちの名前を書き込んでから視聴覚室前の掲示板に貼り出された。
「はいっ、三百円分のチケットでーす!」
「いいのかな、貰っちゃって」
「いーのいーの! 使ってよね♡」
僕が亜衣から賞品のチケットを受け取っている間、土佐辺くんはスマホで掲示板を撮影していた。
「何やってるの?」
「こーゆーのも参考になると思って」
「そっか。そうだね。僕も撮っておこう」
完全に目的を忘れて楽しんでしまっていた。
「瑠衣、生徒会の焼きそば屋台美味いぞ。後で行ってみな」
「うん、わかった。ありがと」
白い浴衣姿のまま廊下に出てきた迅堂くんがおススメの屋台を教えてくれた。その際に、ぽんぽんと頭を軽く叩かれる。
「迅堂、持ち場に戻んなくていいのか?」
「いま戻るって。じゃあな!」
「頑張ってね」
「おうっ、楽しんでいけよー!」
気軽に触れてくれるのは文化祭でテンションが上がっているからだろうか。嬉しくなって、手にしたチケットをぎゅっと握り締めた。