先に進むと、今度は上から細く割かれた無数のビニールテープが吊り下げられている通路があった。淡い紫色の照明がテープに反射して幻想的な光景となっている。BGMは不気味な雨音。

 手でテープを掻き分けながら前に進むと、何か柔らかなものを踏んだ。下を向くと、僕の足の下に青白い手があった。仕切り壁の下から伸びた腕を踏んでいたのだ。

「ぎゃああああ!!」

 驚かし役の人の手を気付かず踏んでしまったのかと思い、慌てて飛び退く。勢いで壁に当たりそうになった僕の身体を土佐辺くんが支えてくれた。

「よく見ろ。作り物だ」
「え、あっ、ホントだ」

 よく見れば、肘丈の白いゴム手袋に何かを詰めただけだった。上から吊るされたビニールテープに気を取られているうちに仕切り壁の下から足元に置いて驚かせるタイプの仕掛けだ。偽物の手には紐が付いていて、僕たちが見ている前でスルスルと回収されていった。それを見送ってから、二人でプッと笑う。

「さっきの悲鳴、あれ新記録じゃね?」
「そんなに大きかった?」
「廊下まで聞こえてたと思う」
「うわあ、恥ずかしい」

 廊下には亜衣たちがいるのに、後から何か言われたらどうしよう。そう言えば、迅堂くんは驚かし役なんだっけ。この中のどこかにいるのかな。

「行くぞ」
「う、うん」

 土佐辺くんに手を引かれ、僕は次の角を曲がった。