視聴覚室前の廊下の窓は一部が塞がれ、他より薄暗くされていた。入り口には電飾で作られた光る案内板があり、炎が風に揺らぐようにLEDの明かりも不規則に点滅している。おどろおどろしいBGMと相まって、凝った演出だと感じた。

「ハイッ、ここがウチのクラスの出し物『絶叫お化け屋敷』でーす!」
「ぜ、絶叫……?」
「そう! 中にある(おどろ)かしポイントでより大きな悲鳴を上げた人には屋台で使えるチケットを差し上げまーす!」

 そう言って亜衣が胸元から見本のチケットを出して見せた。食券のようなもので、百円券が三枚綴りになっている。お化け屋敷の参加料が百円だから、もし貰えれば元が取れる。入口の前で説明を聞いている間も中から悲鳴が聞こえてきた。締め切ってるのにこんなに聞こえるなんて、中では一体なにが起こってるんだろう。ちょっと怖い。

「それ、チケット欲しさにワザと悲鳴上げるやつもいるんじゃね?」

 それは確かに有り得る。土佐辺くんの指摘に、亜衣はフッと笑った。

「実は『驚かしポイント』は毎回変わるのよ。音の大きさを測る機械は中で待機しているオバケ役が持ってて、それ以外の場所では幾ら叫んでもノーカウント。あと、一度チケット貰った人はもう参加できない決まりなの」

 対策はしっかり考えられているようだ。

「あと、チケットが貰えるのは『現時点での最高記録』を塗り替えた人だけだからね~。つまり、時間が経てば経つほど達成しにくくなるってわけ♡」

 今はまだ開場から三十分しか経っていない。記録保持者はその都度写真を撮って廊下に掲示されていく。現時点ではまだ二枚しか貼られていないらしい。

 説明が終わった頃に入口の扉が開いた。どうやら順番が来たみたいだ。亜衣がカーテンを捲ると、内部は淡い光が足元にあるだけでほぼ真っ暗だった。

「二名様、ごあんなーい!」

 亜衣に背中を押され、僕と土佐辺くんはお化け屋敷に足を踏み入れた。