「実行委員って見回り当番があるんだよね」
「生徒会と先生たちだけじゃ人手が足んねーからな。まあ、担当区画と時間帯も大したことねーし、クラスのシフトを調整すりゃ問題ない」
校門に設置するゲートは毎年使うものだから倉庫に保管されている。共有スペースの飾り付けは生徒会の担当だ。文化祭当日の校内パトロール『見回り当番』は実行委員が持ち回りで担当する。
去年、一年生の時は初めての文化祭でワタワタしてて、クラスメイトに頼まれたことをこなすだけで精一杯だった。他の人が何をしているのか分からなかったし、知ろうとも思わなかった。
「土佐辺くんって去年も実行委員だった?」
あまりにも手際が良いから経験者かと思いきや「いや。今年初めてやる」と返された。僕と同じ初めてのくせに、なんで色々知ってるんだろう。
委員会が終わり、参加者が次々と教室から出て行く姿を眺めていたら、土佐辺くんが急に席を立った。ガタッと大きな音がして、教室内にいた人たちがびっくりして振り返る。
「と、土佐辺くん?」
「……いや、何でもない」
座り直す彼を見て、立ち止まっていた人たちは再び歩き始めた。
「君たち、ここもう閉めるから早く出てね」
「あっ、ハイ。いま出ます!」
実行委員会の顧問の先生から促され、僕たちも席を立ち、廊下に出る。教室に戻ろうとしたけど、何故か土佐辺くんは逆方向に歩いて行こうとする。
「どこ行くの?」
「悪い安麻田。先に帰ってて」
「う、うん」
そう言う彼の目は僕を見ていなくて、廊下の先を睨みつけていた。実行委員会を終えて、出て行く他のクラスの人たちを見送ったあたりから様子がおかしい。誰か知ってる人が居たんだろうか。
しばらく教室で待っていたけど、土佐辺くんは戻ってこなかったので先に帰った。