「瑠衣はさァ、女の子に触りたいって思う?」
「ぼ、僕まだわかんない」
「瑠衣はそーゆーと思った」

 素直に答えれば、亜衣は肩をすくめた。

「さっき、晃から『エッチしたい』って言われて、拒否ったら微妙な空気になってぇ」
「そ、そうなんだぁ……」

 だから迅堂くんは僕が帰宅したのを切っ掛けに慌てて帰っていったんだ。いつもと様子が違ったから心配したけど、理由が分かれば納得だ。

「亜衣はしたくないの?」
「そういうワケじゃないけど……ただ、ウチのクラスの友だち、最近そーゆー話ばっかでさ。もしエッチしたら武勇伝みたいに面白おかしく話されちゃうのかなって」

 亜衣の悩みはもっともだ。

「誰にも言わないでほしいならそう言えばいい。迅堂くんは友達に自慢するために亜衣を傷付けるようなヤツじゃないよね」
「うん」

 いつの間にか、僕は亜衣を抱き締めていた。小さい頃は親も見間違うくらいそっくりだったけど今は髪型や体つき、性格が違う。外では明るく周りを照らす太陽みたいな亜衣だけど、僕の前では弱音を吐く。可愛くて守りたくなる妹だ。

「無理やりしようとしてきたら僕に言いなよ。代わりに怒ってあげる」
「ふふっ、瑠衣に怒られても怖くないじゃん」

 やっといつもの笑顔に戻った亜衣は胸の中に抱えていたモヤモヤを吐き出してスッキリしたらしい。「なんかお腹すいてきちゃったー!」とベッドから飛び降りて階下に降りていった。

 僕たちは双子なのに性格は真逆。
 似ているのは顔立ちと、……好きな人だけ。