「よぉ安麻田」
「土佐辺くん」

 駅のホームに着くと、土佐辺くんが立っていた。いつも僕が乗っている電車はつい先ほど出たところだ。先に来ていたのに、彼は何故乗らなかったんだろう。

「混んでたから一本遅らせた」
「次のも混んでない?」
「朝の時間帯はあんま変わんねーな」

 まさか僕が来るのを待っていたのだろうか。

「亜衣たちの学校、文化祭準備の追い込みなんだって。その話してたら家を出るの遅くなっちゃって」
「今週の土曜だったよな。何時から?」
「一般入場は十一時から」
「そんなら朝はゆっくり行けばいいか」

 一緒に行く約束を覚えてくれていたようだ。他校の文化祭なんて初めてだから、土佐辺くんが一緒なら心強い。

「そういや連絡先交換してなかったな」
「待ち合わせする時に要るよね」
「安麻田が出先で迷子になりそうだし」
「失礼な! 大丈夫だよ、たぶん」

 電車を待つ間に土佐辺くんと連絡先を交換しながら、僕は頭の中から迅堂くんのことを押し出した。