テストは昼前に終わり、大半の生徒が帰宅していった。近くのコンビニでパンと飲み物を買い、公園のベンチで食べる。良い天気だ。平日の昼間に制服姿でウロウロしたら通り掛かった人に不審な目で見られそうだけど、今日はテストで半日なのだから堂々としていられる。

 これから夕方まで時間を潰さなくてはならない。亜衣と迅堂くんの逢瀬の邪魔をしたくないからだ。よく考えれば、亜衣たちの学校は先週テストが終わっているから午後四時くらいまで授業がある。一度家に帰るという手もあるが、何度も往復したくはない。

 時間を潰すため、お昼ごはんを食べ終えてから図書館へと向かった。利用客は親子連れやお年寄りばかり。同じ学校の制服を着た人もちらほら見掛けた。僕と同じでテスト勉強をしていく人もいるようだ。

 一階の図書貸し出しカウンターそばにある自習スペースのひとつを確保して、カバンから教科書とノートを取り出す。閉館まであと五時間。ずっと机に向かって勉強し続けるのは正直つらい。

 せっかく利用カードを作ったのだから、息抜きに本を借りて読むのもいいかもしれない。二時間ほど机に向かったあと、気分転換に図書スペース内を散策してみた。やはり蔵書が多い。専門書の類もかなり充実している。背表紙を眺めているだけで楽しい。

「あれっ、瑠衣くん」

 気になった本を手に取ろうとした時、後ろから声を掛けられた。振り返ると、先週の勉強会の時に何度か会った先輩が笑顔で立っていた。

「こ、こんにちは」
「それ借りるの? 難しくない?」

 僕が手を伸ばした先にあるのは『機械製図検定問題集』。確かに、素人が見て理解できるものではない。

「いえ、どんな内容か気になって」
「暇つぶし?」
「そんなようなものです」

 パラ見するだけのつもりだったけど、なんとなく本に触れることが躊躇われて手を引っ込める。すると、先輩はニコッと笑って僕の隣にするりと近寄ってきた。