走り去っていく自転車を見送ってから、再び駅に向かって歩き始める。足取りは重い。土日も結局テスト勉強は捗らなかった。帰りに図書館で勉強する選択は間違ってなかったかもしれない。

 憂鬱な気持ちでホームに立ち、電車を待っていると、すぐ隣に誰かが立った。顔を上げれば、土佐辺くんと目が合った。

「よぉ、おはよ安麻田」
「おはよう土佐辺くん」

 いつもと同じ、自信に満ちた表情。肩を丸めて所在なさげにしている僕とは正反対だ。

「いつもこの時間なのか。早いな」
「早めに教室に着いてないと心配で」
「オレいつもはもう一本遅い電車。今日はたまたま早起きしただけ」
「そうなんだ」

 通勤通学客が多い時間帯は電車の本数も増えている。一、二本後の電車でも始業時間に間に合う。僕は心配症なので、普段から少し早めに家を出るようにしている。

「ん? 目が赤いな」
「えっ、いや、その」

 まずい。泣きそうだったのがバレてしまう。

「さては寝る時間削ってテスト勉強してたんだろ」
「う、うん」

 話をしているうちに電車が来た。車内は混雑していて雑談どころではない。学校の最寄り駅に着く頃には二人とももみくちゃになっていて『通勤ラッシュを減らすにはどうすべきか』を討論しながら登校した。

 今日のテストの出来栄えは過去最悪だった。