「アイツら成績ギリギリだから、余計な仕事増やして追試になったら可哀想じゃん」
話し合いで盛り上がっていたメンツはみな運動部で推薦入学してきた、通称・スポーツ推薦組。しかし、うちは進学校。成績が落ちれば容赦なく部活を休まされ、既定の課題が終わるまで復帰は許されない。秋には色んな大会が開催される。レギュラーから外されたら元も子もない。
「その点、安麻田は入学してからずっと成績上位をキープしてるし、他のヤツより余裕があると思ってさ」
「そっか」
クラスメイトたちの事情を思い遣った結果、僕に白羽の矢が立てられたというわけだ。
「成績良い人なら他にもいるよね。駿河くんとか」
「アイツはカタブツだからな~。融通利かねえヤツはこーゆーの向かねーんだよ」
「確かに」
「それに、アイツ週三で塾通いだろ? そもそもヒマがねーんだよな」
駿河くんも僕たちと小学生の頃から一緒の友だちだ。成績は常に学年トップ、真面目で実直な性格を買われてクラス委員を務めている。土佐辺くんの言う通り、駿河くんに文化祭の実行委員は不向きかもしれない。
土佐辺くんは本当に色んなことを把握している。他のクラスのことからクラスメイトの個人的な情報まで。彼には知らないことなんてないんじゃないかな。