火曜から始まった勉強会も三日目。今日は駿河くんも参加している。教える側に回る楽しさに気付いたけれど、僕も勉強をしなくてはならない。苦手な科目を中心に教科書を読み返して復習していく。
「珍しく真面目だな」
「僕はいつも真面目だよ」
「はは、そうだったかぁ?」
隣に座る土佐辺くんが僕をからかう。こんな風に軽口を叩き合えるようになったのはここ数日のことだ。
とっつきにくい雰囲気があるからか、土佐辺くんは特定の人と特別仲が良いということはない。誰とでもフラットな付き合いだ。そんな中、僕は気を許してもらっている感じがする。なんだかんだで小学校の頃から知ってる相手だ。逆に仲良くなるのが遅すぎたのかもしれない。
「そういえば、ここ市民じゃなきゃ本は借りれないのかな」
僕の住む市の図書館は市内在住の人以外には貸出できない決まりがある。
「この図書館は市内の学校や職場に通ってる人も貸し出しOKだぞ。オレ利用カード持ってる」
「え、そうなの? 僕もカード作れる?」
「学生証があればすぐ発行してもらえるよ」
そう言いながら、土佐辺くんはカバンから自分の図書館利用カードを取り出して見せてくれた。名前と所属、利用期限などが記載されている。所属は学校名、期限は卒業予定の時期までだ。
今まで利用したことがなかったけれど、せっかく学校の近くにあるのだから利用しない手はない。図書スペースはかなり広い。きっと役に立つ本がたくさんある。
「僕、カード作ってくるね」
「今からか?」
「勉強会の後だと閉館間際になっちゃうから」
平日の利用時間は午後六時まで。閉館間際の時間帯は貸出や返却の手続きをする人が増えるため、利用カード作成をお願いするのは憚られる。
「ついていこうか?」
「土佐辺くんはみんなに勉強教えてて」
一階のカウンターに行くだけなら一人で出来る。カバンから出した学生証を握り締め、僕は会議室を出た。