勉強会を終えて帰宅する。まだ明るい時間帯なのに、玄関には亜衣の靴しかなかった。テスト真っ最中だから迅堂くんは遊びに来ていないようだ。
「亜衣ー、入るよ」
自分の部屋にカバンを置いてから隣の部屋の扉をノックすると、「はいはーい」と軽い返事が返ってきた。中に入ると亜衣が机に向かい、教科書とにらめっこをしている最中だった。
「明日がテスト最終日?」
「うん」
「僕で教えられることある?」
「うーん、コレは瑠衣じゃ無理かな」
そう言われて教科書をよく見れば、工科高校にしかない学科だった。回路の図解や謎の数字がびっしり。確かに僕では役に立てそうにない。
「うわ、難しそう」
僕は普通の教科ならどれもそこそこ分かるけど、こういった特別な学科については完全にお手上げだ。
「晃はこーゆーの得意なんだよね。高校にいる間にいっぱい資格取っておきたいって言ってた」
「へえ、そうなんだ」
「ぶっちゃけ、クラスのほとんどは難し過ぎて授業についていけてないんだけどね~。アタシもそう」
あはは、と笑いながらも亜衣は教科書から目をそらさない。真剣そのものだ。