翌日の放課後も図書館の二階にある会議室に集まって勉強会だ。駿河くんは塾の日で参加していないので、檜葉さんのテンションがあからさまに低い。
スポーツ推薦組は相当テストに自信がないらしく、誰一人欠けることなく参加している。駿河くんがいないため、僕と土佐辺くんがそのぶん彼らに接する機会が増えた。次々に質問され、その都度解説していく。教えることで自分の復習にもなる。勉強会を通じて普段あんまり喋らないクラスメイトと話せるのも楽しい。
「安麻田の説明分かりやすい」
「教えるのうまいよな」
「そ、そうかな?」
この前、亜衣と迅堂くんに勉強を教えていたからだろう。何が分からないのかすら自覚していない二人に理解してもらうため、可能な限り簡素な説明を心掛けた経験が今回の勉強会で役に立っている。
亜衣たちの学校は今週テストだ。勉強の成果は出ているだろうか。亜衣が赤点を取ってなければいいけど。
「安麻田、みんなが勉強のお礼で飲みもん奢ってくれるってさ。カネ貰ったから買いに行こ」
「えっ!?」
驚いて前を見れば、みんながニッと笑顔を向けていた。
「あ、ありがとう、みんな」
「そりゃこっちのセリフだよ」
「ありがとな、安麻田!」
何だかすごくこそばゆい。嬉しさと気恥ずかしさで熱くなる頬を手のひらで隠し、土佐辺くんと一緒に会議室を出た。
「安麻田、顔真っ赤」
「うう……」
隣を歩く土佐辺くんがワザと顔を覗き込もうとしてきたので手で押し退ける。あのまま会議室にいたら涙が出そうだったから、クールダウンできる時間はありがたい。
「自販機、一階の出入り口にしかないんだよな」
「そうなんだ。僕、ここ詳しくなくて」
「隣の市の施設なんか馴染みないもんな。でも、オレらの市にある図書館より本が多いんだぜ? 今度図書スペースも覗いてみろよ。専門書とか充実してるからさ」
「う、うん」
僕と土佐辺くんは隣の市から通っているから、学校のそばにあるこの図書館には馴染みが薄い。会議室が借りれるのも今回初めて知ったくらい。