テスト週間に入り、部活や委員会などは休みとなった。つまり授業が終わった後の居残りが出来ないということだ。

「全員に役割を決めた。テスト明けから本格的に準備に取り掛かるからそのつもりで。あと、各自男装、女装用の服を家族や知り合いから借りれるようにしておいてほしい。アテがないヤツは早めに相談しろ。不明な点はオレか安麻田まで。以上」

 土佐辺くんはホームルームの時間を貰い、文化祭についての連絡事項を伝えた。勝手に割り振りを決めたから反発されるかと思ったけど、事前のリサーチのおかげで適材適所に配置出来ている。クラスメイトはすんなり自分の役割を受け入れてくれた。

 衣装についても、うちのクラスにはそこまで大柄な生徒はいない。親兄弟から借りれば何とか着られる服があるだろう、というのも土佐辺くんの見立て通り。筋肉質な運動部の男子も、洋服は無理でも浴衣なら着られる。多少丈が合わないのも男装・女装の醍醐味だ。

「ありがとう土佐辺くん。みんなへの説明、全部任せちゃってごめんね」

 ホームルームが終わってから声を掛けると、土佐辺くんはいつもの人好きのする笑みを浮かべた。

「いーってことよ。安麻田はオレが無理やり頼んで実行委員になってもらったんだ。喋りや説明はオレのほうが得意だからな。これも適材適所だよ」

 一緒に考えてくれるだけでいいと彼は言うけれど、さっきみたいに人前で説明することだって実行委員の仕事だ。僕は本当に役に立っているんだろうか。