「で、瑠衣のクラスは何やるの?」
「ウッ……」

 この流れなら当然の質問だ。。服を借りなきゃならないから亜衣には教えるつもりだったけれど、迅堂くんには知られたくなかった。でも、言わざるを得ない状況だ。

「クラスのみんなで、……男装と女装を」
「えー、絶対似合うじゃん!」
「瑠衣は亜衣に似て可愛いからな」
「全っ然嬉しくないんだけど」

 確かに顔は亜衣に似てるけど、僕は身長も体つきも声も男。服を変えただけで女の子になれるわけじゃない。

「じゃあ、アタシのお気に入りの服を貸してあげる! 瑠衣を一番人気にしてみせるわ!」
「だな。瑠衣ならナンバーワン間違いなしだ」
「迅堂くんまで!」
「こうしちゃいらんないわ! 服を選ばなきゃ!」
「亜衣、テスト勉強は!?」

 亜衣は隣にある自分の部屋で服選びを始めてしまった。僕の部屋で迅堂くんと二人きりになるのは何気に初めてで緊張する。

「瑠衣」
「なに?」

 しばらく無言で教科書を見ていた迅堂くんが急に話し掛けてきた。いつになく真剣な表情で、まっすぐ僕を見つめている。

「この前ケンカした時、仲直りするように亜衣に話をしてくれたんだろ。ありがとな」
「ううん、気にしないで」
「俺バカだからさ、いっつも考えるより先に行動して後から反省してばっかなんだ。だから、瑠衣が味方で居てくれて助かってる」

 そんな風に思われていたなんて。良かった、嬉しい。迅堂くんは感情的になりやすいけど、落ち着いて考えて、きちんと自分の非を認めることができる人だ。

「僕はいつだって迅堂くんの味方だよ。『可愛い妹の彼氏』で『僕の大事な友だち』だもん」
「これからもよろしくな」
「うん、もちろん!」

 ニッと笑い合い、軽く拳をぶつけ合う。迅堂くんが幸せならばそれでいい。亜衣と仲良くしていてくれれば満足だ。

「おっまたせー! どれにしようか迷ったけど、やっぱミニスカは外せないよね!」

 亜衣が持ってきた服を見て、僕たちは「何これ」と声を揃えた。膝より遥かに短いマイクロミニのスカート。他の服も布面積が少ないものばかり。

「なんだよ亜衣! その服見たことねーぞ!」
「なに怒ってんの晃。買ったはいいんだけどぉ、ぱんつ見えそうだから外で着たことはないんだよね~」

 そんなものを兄に着せるつもりか。亜衣が選んでくれた服は全部露出が多いため、とりあえず却下した。