勉強の合間に文化祭について聞いてみた。

「アタシたちのクラスはお化け屋敷やるんだ~。遮光カーテンがある視聴覚室借りて、中に迷路みたいなの作ってぇ」
「へえ、面白そう。二人ともお化け役やるの?」
「アタシは表で呼び込みするの!」
「俺は驚かせる係」

 なるほど適材適所。納得の分担だ。

「当日遊びに行くね」
「ウチの学校ガラ悪いぞ。大丈夫か?」

 迅堂くんが心配してくれている。しかし、通ってる本人が改めて注意を促すほど治安が悪いのか。

 高校だよね?
 貧民街(スラム)じゃないよね?

「だ、大丈夫! 一人じゃないから」
「誰かと一緒に回るの? カノジョ?」
「違うよ。男友だち!」
「なーんだ」

 一緒に行くのが男だと分かった途端に亜衣は興味を無くした。悪かったな、僕に恋人はいない。

「土佐辺くんて覚えてる? 彼と行く予定」
「覚えてる覚えてる! 土佐辺くんと一緒なら安心だね。ねっ、晃」
「だな。土佐辺から離れるなよ瑠衣」
「わ、分かってるよ」

 めちゃくちゃ念を押された。

「でも意外だな。土佐辺と仲良かったっけ」
「小学生の時から同じ学校なの、男子は土佐辺くんと駿河くんくらいだからね」

 僕が通う将英学園は隣の市にある進学校。通える範囲には他に普通科高校と工科高校があり、亜衣たちは市内の工科高校に通っている。

「土佐辺くんとは文化祭の実行委員を一緒にやることになったんだ」
「ああ、だから見学しに来るんだ」
「そう。そっちの文化祭の二週間後にやるからね。参考になればと思って」
「見て驚くなよ? 毎年すっげーから」
「楽しみにしてる」

 出し物はもう決まってるけど、ポスターとか看板とか呼び込みの仕方とかを参考にしたい。実行委員になる前はそんな風に思ったことすらなかった。僕が学校行事に積極的に参加するなんて初めてかもしれない。誘ってくれた土佐辺くんに感謝だ。