来週からテスト週間に入る。授業後の部活や委員会、居残りは無し。テスト明けに文化祭の準備に取り掛かれるよう今日のうちに色々と決めておきたい。
「他に必要なモンある?」
「給仕係にお揃いで目印付けたいな。男装や女装をするって言っても私服だとお客さんと区別がつかなくなりそう」
当日はうちの学校の生徒だけでなく、父兄や一般の人も多く訪れる。単なる私服では誰が店員なのか、お客さん側が判別できない。
「それもそうだな。エプロンとか?」
「エプロンだと折角の服が見えなくなるよ。名札は付けるとして、他に何か……」
「服を隠さないとなると、腕章?」
「いいね。じゃあ腕章も作ってもらおっか」
話しながら、土佐辺くんはどんどんノートにメモしていく。走り書きなのに綺麗な字で、分かりやすくまとまっている。事前準備の内訳として、テーブルクロス、看板、ポスター、内装、メニュー作成などを数人ずつの班に分けていく。二人で案を出し合っているからか、打ち合わせは順調に進んだ。
「テスト明けの実行委員会で奪い合いになると思うから、先に備品の目星をつけておきたい」
「じゃあレンタル備品のリスト貰っておくね」
打ち合わせに熱中していたら、教室に残っているのは僕たち二人だけになっていた。
そうだ、聞きたいことがあったんだ。
「あ、あのさ」
なんて切り出そう。亜衣のためとはいえ、クラスメイトに変なこと聞いて呆れられたくない。でも、土佐辺くんモテそうだもん。昼休みだって檜葉さんと一緒に居たし、僕が知らないだけで付き合ってたりするのかな。
「安麻田?」
話し掛けておいて急に黙り込んだ僕を、土佐辺くんが覗き込んでくる。いつもはすぐ逸らされてしまう彼の目がまっすぐ僕を見据えていた。