昨日の今日だ。こんなことを言われても信じてもらえないとは思う。今はまだ迅堂くんに対する気持ちほどではないけれど、土佐辺くんを好きだという気持ちはこの先きっともっと強くなる。そう確信していた。

「……ッ」
「うわっ」

 しばらく無言で立ち尽くしていた土佐辺くんが突然手を伸ばし、僕の身体を抱き寄せた。身長差のせいで彼の肩口に顔を埋める状態となる。びっくりし過ぎて何も抵抗できずにいたら、抱き締める腕の力が更に強くなった。身動きひとつできなくて、彼が今どんな顔をしているのか全然見えない。

「──安麻田、好きだ。ずっと好きで、好きで、諦められなかった」

 頭のすぐ上から降ってくる言葉は普段の土佐辺くんからは考えられないくらいに弱々しかった。制服越しに伝わる体温が熱い。彼の声が耳に届く度に、つられて僕まで熱くなる。

「ずっと、って……いつから」
「小学校の頃から」

 返答に驚いて思わず顔を上げると、至近距離で目が合った。照れて真っ赤になっているのに、土佐辺くんは目をそらさない。

「双子をからかわれた時、安麻田は毎回妹を(かば)ってただろ。同じ顔で同じ背丈なのに、ちゃんと『お兄ちゃん』してるなって思ってた」

 からかわれた経験は何度もある。周りも次第に双子の存在に慣れてきて、二年生になる頃にはなんにも言われなくなった。つまり、土佐辺くんはそれ以前から認識していたのだ。

 双子の片割れとしてではなく、僕自身を。