玄関前で尻尾を振るリーを撫でてから土佐辺くんの家へと入る。先に靴を脱いだ彼がこちらの様子を窺うように振り返った。
「オレの部屋でもいい?」
「土佐辺くんがいいなら」
「密室で二人きりになるんだけど」
密室て言うな。そんな風に宣言されたら逆に意識してしまう。でも、事前に断りを入れてくれるのは彼が誠実だからだ。
「君は僕が嫌がるような真似はしないって知ってる。だから密室だろうが二人きりだろうが平気だよ」
「うっ……」
信頼していると伝えれば、土佐辺くんは頭を抱えて座り込んでしまった。どうしよう。面白い。
「ごめん、めっちゃ下心ありました。理性が保たないからリビングでいい?」
「あはは、なにそれ」
「安麻田に嫌われたくないんだよ」
恥ずかしそうに頭を掻く彼を見て、胸の辺りが温かくなる。真っ直ぐな好意を嬉しく感じるのは、僕も彼を憎からず思っているからだ。
「単純だって笑ってくれていいんだけど、僕ね、土佐辺くんのこと結構好きみたい」
何度も何度も助けられた。つらい時に寄り添ってくれた。僕が好きになるには十分な理由だ。
気持ちを相手に伝えられることは幸せだ。よほど信頼していなければなにも言えない。そう考えると、僕はかなり土佐辺くんに気を許しているみたい。
僕の言葉に、土佐辺くんはリビングのど真ん中でフリーズしてしまった。