「今の学年で同じクラスになれて嬉しかったんだ。でも、なかなか話し掛ける切っ掛けがなくて」
「僕、嫌われてると思ってた」
「それはない!」
実際、土佐辺くんからは目が合う度に顔を逸らされていた。だから、彼から一緒に実行委員をやろうと誘われた時はかなり驚いた。打ち合わせを繰り返すうちに普通に目を合わせてくれるようになったけれど、心のどこかで疑問に思っていた。
「オレの周りはいつも騒がしいだろ。安麻田はそういうの苦手だから、オレからは絡みに行けなかった」
「そうだったんだ」
土佐辺くんが普段連んでいるメンツは運動部の、いわゆる陽キャばかり。今回の文化祭で彼らに対する苦手意識は無くなったけど、以前なら絶対自分から話し掛けるなんてできなかった。
「土佐辺くんやみんなと仲良くなれて嬉しいよ。切っ掛けをくれてありがとう」
笑ってお礼を言うと、彼も笑顔を返してくれた。着替え終えたクラスメイトたちがちらほら教室に戻ってきたので、僕たちも着替えるために控え室代わりの空き教室に急いだ。
「スカート破れたのお姉さんに怒られない?」
「もう着ない服らしいから大丈夫だと思う」
「怒られたら僕を助けたせいだって説明してね」
「安麻田のせいじゃねーよ」
少し遅れて教室に戻ると、みんなが「お疲れー!」と拍手で出迎えてくれた。今まで我慢してたのに、そこで僕の涙腺は完全に決壊してしまった。