翌日の昼休み、いつものように駿河くんと購買に寄り、天気が良いから中庭で食べようと誘った。教室では話しづらいことがあるからだ。
校舎と体育館の間には手入れが行き届いた木と芝生の庭があり、等間隔でベンチが設置されている。
「安麻田くん、食べないのか」
「え? あ、食べる食べる!」
焼きそばパンを持ったままボンヤリする僕を見兼ね、駿河くんが声を掛けてくれた。隣に座る彼は既に食べ終えている。慌ててパンにかじり付きながら、どうやって例の話を切り出そうかと頭を悩ませた。
「なにか悩みでも?」
「そ、そういうわけじゃ」
どうしよう。駿河くんが聞く姿勢を見せている。今言うべきか。サラッと聞いて、さっさとこの問題を片付けてしまいたい。男同士の雑談だもん。別に変じゃないよね?
「あ、あのさ、駿河く──」
意を決して口を開いた瞬間、急に陽射しが何かに遮られた。誰かがベンチの前に立ったんだ。その『誰か』の表情は逆光でよく見えない。
「こんなとこで食べてたんだ。暑くね?」
「と、土佐辺くん」
僕たちの前に立っていたのは土佐辺くんだ。たまたま通り掛かったから声を掛けてきたのかな。もう少しで聞けたのにモタモタし過ぎた。