翌日の昼休み、いつものように駿河くんと一緒に購買に向かう。今日は天気が良いから中庭で食べることにした。教室では話しづらいことがあるからだ。

 校舎と体育館の間には手入れが行き届いた木と芝生の庭があり、等間隔でベンチが設置されている。少し前までは陽射しが強過ぎて外には出られなかったけど、九月も下旬に差し掛かると過ごしやすい。

「安麻田くん、食べないのか」
「え? あ、食べる食べる!」

 焼きそばパンを持ったままボンヤリする僕を見兼ね、駿河くんが声を掛けてくれた。隣に座る彼は既にパンを二つ食べ終えている。慌ててパンにかじり付きながら、どうやって例の話を切り出そうかと頭を悩ませた。

「なにか悩みでも?」
「そ、そういうわけじゃ」

 どうしよう。駿河くんが聞く姿勢を見せている。今言うべきか。サラッと聞いて、さっさとこの問題を片付けてしまいたい。変に意識するから駄目なんだ。男同士の雑談だもん。別に変じゃないよね?

「あ、あのさ、駿河く──」

 意を決して口を開いた瞬間、急に陽射しが何かに遮られた。誰かがベンチの前に立ったんだ。その『誰か』の表情は逆光でよく見えない。

「こんなとこで食べてたんだ。暑くね?」
「と、土佐辺くん」

 僕たちの前に立っていたのは土佐辺くんだ。たまたま通り掛かったから声を掛けてきたのかな。もう少しで駿河くんに聞けたのにモタモタし過ぎた。