『男装&女装カフェ』は、ありがたいことにオープンしてからずっと客足が途絶えず賑わっている。
呼び込み担当として立て看板を持ったスポーツ推薦組を校内各所に配置している。厳つい体格の彼らが可愛い色柄の浴衣を着ている姿は人目を引いた。
「どうぞ。今ならすぐお席にご案内できますよ」
「は、はいぃ……♡」
教室前まで来たら、お客さんは高確率で中に入ってくれる。入り口付近に立つ受け付け担当の檜葉さんに魅せられるからだ。美人で長身痩躯の彼女は男性からの受けが良い。更に、細身のスーツをパリッと着こなした凛々しい男装姿は女性からの人気も高い。
調理係も給仕係も慣れてきた頃、先に自由時間を満喫していたメンバーが戻ってきた。腕章を渡して店番を交替する。手順を何度か実際に見せて引き継いだ後、僕たちは外に出た。
「さて、なにか食うか?」
「タコ焼き食べたい!」
「火を使う系の屋台は外だな。行くか」
昇降口で上靴からスニーカーに替えて外に出ると、周りの視線がやたらと突き刺さった。教室内では全員そうだったから気にならなかったが、僕たちは女装したままだ。
「着替えてくれば良かったかな」
「こんなの何度も脱いだり着たりしてられるか。見回りの後にもう一回店番するんだぞ」
「それもそうだよねぇ」
とはいえ、慣れないスカート姿で外を出歩くのは緊張する。風が吹く度に裾がふわりと浮かんで気が抜けない。土佐辺くんはタイトスカートだから裾は捲れにくいけど、代わりに大股で歩けないという制約がある。
屋台で買い食いして、他クラスの出し物を見に行って知り合いに冷やかされたりしながら休憩時間を満喫した。