あれから特に何事もなく、クラスの出し物の準備も着々と進み、無事に文化祭当日を迎えた。

 うちのクラスの出し物は『男装&女装カフェ』だ。全員が男装または女装をして客引きから調理、給仕まで行う。男女別で空き教室を借りて衣装に着替え、教室で準備に取り掛かる。

 僕は亜衣から借りた肩が出るオフショルダーのニットに膝丈のスカートという恥ずかしい格好をし、ビジューとかいう大粒のアクリル製パーツ付きのヘアピンで髪を留めている。

 土佐辺くんはお姉さんから借りたスーツ。ワインレッドのスタンドカラーフリルブラウスに膝上丈の黒いタイトスカート、黒ストッキング。細身の高身長な彼にぴったりの、大人っぽい衣装だ。ハイヒール履いているから普段より背が高くて威圧感がある。

 駿河くんは檜葉さんから借りたドルマンスリーブのワンピースで、腰の辺りを紐ベルトで締めている。下はスキニーとかいう細身のズボンを履いていた。落ち着いた色合いで、駿河くんによく似合っている。

 檜葉さんは駿河くんから借りた細身の紺スーツ。長い髪を後ろで一つに括り、ピシッとしたモノトーンのスーツに身を包んだ彼女は男装の麗人という言葉がぴったりの凛々しさ。

 他のクラスメイトたちは、女子は学ランや甚平、男子は浴衣やスカートなど。みんな見た目も服のジャンルもバラバラだけどよく似合っている。

 一般のお客さんが入るまでの時間、カフェの会場となる教室の飾り付けや売り物の最終確認を行う。

 四つ合わせた机にテーブルクロスを敷き、手作りのメニュー表を置く。室内の壁には手のひらサイズの長方形にカットした段ボールを不規則に並べて貼り付け、レンガ造りのような内装にした。入り口に置く看板もデザインが得意な子が頑張って作ってくれた。

 教室前の廊下には謎が多いファッション専門用語を写真やイラスト付きで簡単に解説したポスターを何枚か展示し、中の席にも同じ内容のものをファイルに綴じて見られるようにしてある。

「将英ファイッ!」
「「「おーッ!!」」」

 スポーツ推薦組が音頭を取って全員で円陣を組み、威勢の良い掛け声で気合いを入れた。