しばらく会話をする。時計のハリが、8時を指す頃。

外が、騒がしくなってきた。

あやかし様方が、現れたのだ。


「お母さん、私行ってくる」
「ええ、李莉……」


涙ぐみながら、外に出ようとする家族たち。

異様な光景だった。だって、あやかしは迎えに来るはずだ。何かに操られて、引き寄せられているようだった。

だけど、自分も例外ではなかったようで、身体が勝手に動く……というか、由貴の気配がした。


引き寄せられるように外に出る。


暖かい色の火玉がたくさん浮いていて、辺りを見回すと女があやかしに見入られていた。


それも、ものすごい人数がだ。伝説では、知らないうちに消えていると言っていたが……それは嘘だったよう。

家族たちは送り出していた。


「……さぁ、日和。行くぞ」
「お、鬼神様っ……」


外に出た途端、由貴の姿が現れる。
その声に驚いた李莉と母親がこちらをガン見する中、父親だけは暖かい顔をして手を振っていた。


まるで、父親は迎えが来ることを知っていたように。


ひょいと日和を横抱きにした。


「お、お父さん……!ありがとう!!」


咄嗟に父親にそう言うと、父親は安心したような顔をする。


「ま、待って!!待ってよお姉ちゃん!!」


由貴と共に、日和は消えて行った。


「っ……!!な、なんで!!」


現れたのは清水だった。家が近いため、様子を見にきたらしい。


「日和!!!!」


愛憎混じりの声が夜に響く。

「ねぇ!!清水、どういうことよ!!」
「しらねぇよ!!なんで、なんで日和がっ……」

ぺたりと座り込んでしまった李莉の目には、憎悪が宿っていた。