鬼神さまの狂恋

「……人間、お前らはどうやって愛情を伝えるのだ」
「あ、愛情……!?だ、抱きしめたり、キスしたり……手を繋いだり、ですかね……」
「そうか。じゃあそれをしよう」
「な、なんで!?」


迫り来るあやかしに怯む。

ただ近づいてくるだけのあやかし。どうやら抱きしめるという行動すら知らないようだった。


「……先ほど全てわかったと言ったが」
「は、はい……?」


ポンと頭を撫でられる。その手はやはり人間ではなくて、とても冷たかった。
だけど、どこか心地いい温かさを持っている。


「お前は、ずっと辛かったんだな」
「え……」
「あやかしは妖術を使える。それで少しお前の過去を覗かせてもらった」
「そ、そうだったんですね……」
「僕は鬼神由貴という。よろしくな、日和」


目線が会うように顔を近づけた由貴。

「……ごめんなさい、私よろしくできないです」
「なぜだ」
「死ぬんです。知ってますよね、過去のこと見てくれたなら」
「わかった、じゃあ僕も一緒に死ぬとしよう」
「……え?」


肩にポンと手を起き、嬉しそうにそう言った由貴に驚きが止まらない。


「いいだろう?愛しい女と死ねるなら本望だ」
「い、いやいや……!そんな、だめですよ……!!」
「転生して、お前と幸せな人生を築くのも悪くない。そう思わないか?」
「だ、だからっ……」
「それともなんだ、僕に死んでほしくないのか?」
「……はい」
「じゃあいい。共に生きよう。これから自ら死ぬなんて言ったら、僕も死ぬからな」
「……」

コクリと頷いた。


「じゃあ早速式の用意をしよう」
「え?」
「ん?日和と僕の結婚の話だ」
「す、するなんて言ってません!」
「拒否権などないぞ?」
「っ……!」


由貴の瞳に吸い込まれそうになる。惑わされないように正気を保ち首を左右に振った。

気がつけば、たくさんのあやかしに囲まれている。逃げ場などなかった。


「怯えなくていい。お前の召使たちだ」
「め、召使……!?」


妖狐に猫又、雪女などたくさんのあやかしがそこにはいる。そして深々と頭を下げていたのだ。


(人いないからよかったけど公園で囲まれてお辞儀とか恥ずかしすぎる……!)

下を向きながらそんなことを考えた日和は、再び由貴の方を向く。にっと微笑む由貴。


「夜にならないとお前を攫うことはできないからな、それまで僕が直々に護衛をしてやろう」
「護衛……?」
「ああ。お前の家は危ないからな」
「……そうですね」

妹が帰ってきては、日和の無事は確保されない。そのため由貴は夜になるまで居座ることにしたのだ。



辺りにいたあやかしたちは一気に消え失せ、2人で家まで歩くことになった。