送られてきたのは1枚の写真。小学校の卒業アルバムで、ひとりの男の子が写っている。
その下に記されている名前は、菅原新汰。
(菅原くん……?)
戸惑っているうちに、綾音から電話がかかってきた。
“応答”をタップしてスマホを耳に当てる。
「もしもし、綾音? これって……」
『優翔くんの妹の卒アルに載ってたの。結菜ちゃんと菅原も幼なじみだったんだよ』
「え」
驚きと怪訝の混ざった声がこぼれる。
─────先輩が若槻先輩と幼なじみなら、妹さんも同じ学校出身の可能性高いんじゃないですか。
そのときの菅原くんの口ぶりはまるで他人行儀なものだった。
彼もまた同じ学校出身だったのに、どうしてそのことを教えてくれなかったんだろう。
単に、若槻の妹が結菜だと同定できていなかっただけだろうか。
それとも、あえて情報を隠したり小出しにしたりすることで、わたしが失っていた記憶を取り戻せるようにヒントをくれていた?
────俺が守ります。茅野先輩のこと。
彼は彼なりに、その言葉を全うしようとしてくれていたのかもしれない。
そういう守り方もあるんだ。
(だけど、もしそうじゃないなら……)
わたしに近づいたのには、何か裏がある可能性が高い。
『……気をつけてね、円花』
綾音もそれを危惧しているのか、電話口でも分かるくらいに硬い声で言う。
思わず緊張してしまいながら「うん」と答えかけたとき、不意に背後に気配を感じた。
「先輩」
はっと息をのむ。聞き覚えのある声に身体が強張った。
恐る恐る振り返ると、いままさに思考の中心にいた人物がそこに立っていた。
「菅原くん……」
彼の色白の肌が、暗い夜の中でいっそう際立つ。
表情に乏しいからこそ、何を考えているのか読めなくて不安をかき立てられる。
「ちょっと、話しませんか」