◇
部活に向かう子や方向の異なる子たちと別れ、ひとりで帰路についた。
校門を潜ったとき、スカートのポケットでスマホが震える。
取り出してみると、SNSのダイレクトメッセージが届いていた。
【ずっと見てるよ】
たったひとこと記された文言に、ぞっと背筋が冷える。同時に肌の上を悪寒が這っていった。
「え……?」
アカウントは知らないユーザーのもので、当然ながら交流はない。
思わずあたりを見回すけれど、それらしい怪しげな人影も見当たらなかった。
(気持ち悪い……。いたずら?)
不安感や不快感を覚えながらも、ひとまず無視を決め込んでスマホをしまう。
そのとき、背後から不意にあの優しい声が聞こえてきた。
「あれ、茅野さん?」
振り向いた先にいたのは若槻くんだ。
目が合うなりその双眸を穏やかに和らげ、わたしの元へ歩み寄ってくる。
「偶然だね。いまから帰り? よかったら一緒に帰らない?」
意外なことに積極的で驚かされる。
もしかすると、彼にとってもわたしという存在は満更でもない?
本当に“チャンス”なのかもしれない。そう思ったわたしは快く笑い返した。
「うん、若槻くんがいいなら」
「当然。……ていうか、ごめん。馴れ馴れしくなかった?」
並んで歩き出すなり肩をすくめた彼に「え?」と聞き返す。
「直接聞いたわけじゃないのにきみの名前知ってたりとか、いまの誘いとか……」
「そんなことないよ」
「本当? じゃあ、よかった」
ほっと息をついて笑った。はにかむような横顔を見上げ、少し戸惑ってしまう。
その表情の意味は、尋ねる前に自ら明かされた。
「……実は僕、ずっと気になってたんだ。茅野さんのこと」
どき、と心臓が跳ねた。熱っぽいまっすぐな眼差しに吸い込まれそうになる。
「だから正直、今日のことはラッキーだったなって思ってる。話すきっかけになったから」
「若槻くん……」
思わず呟いた瞬間、彼の瞳がきらめいた。
「僕の名前、知っててくれたんだね。それって……ちょっとは期待してもいいってことかな」
「!」
「なんてね」
ふっと頬を緩める彼は、だけど冗談で済ませる気などさらさらないように見えた。
緩やかに逸らされた視線が名残惜しそうだ。
直感が勘違いなんかではないと、気づくには十分すぎる。
部活に向かう子や方向の異なる子たちと別れ、ひとりで帰路についた。
校門を潜ったとき、スカートのポケットでスマホが震える。
取り出してみると、SNSのダイレクトメッセージが届いていた。
【ずっと見てるよ】
たったひとこと記された文言に、ぞっと背筋が冷える。同時に肌の上を悪寒が這っていった。
「え……?」
アカウントは知らないユーザーのもので、当然ながら交流はない。
思わずあたりを見回すけれど、それらしい怪しげな人影も見当たらなかった。
(気持ち悪い……。いたずら?)
不安感や不快感を覚えながらも、ひとまず無視を決め込んでスマホをしまう。
そのとき、背後から不意にあの優しい声が聞こえてきた。
「あれ、茅野さん?」
振り向いた先にいたのは若槻くんだ。
目が合うなりその双眸を穏やかに和らげ、わたしの元へ歩み寄ってくる。
「偶然だね。いまから帰り? よかったら一緒に帰らない?」
意外なことに積極的で驚かされる。
もしかすると、彼にとってもわたしという存在は満更でもない?
本当に“チャンス”なのかもしれない。そう思ったわたしは快く笑い返した。
「うん、若槻くんがいいなら」
「当然。……ていうか、ごめん。馴れ馴れしくなかった?」
並んで歩き出すなり肩をすくめた彼に「え?」と聞き返す。
「直接聞いたわけじゃないのにきみの名前知ってたりとか、いまの誘いとか……」
「そんなことないよ」
「本当? じゃあ、よかった」
ほっと息をついて笑った。はにかむような横顔を見上げ、少し戸惑ってしまう。
その表情の意味は、尋ねる前に自ら明かされた。
「……実は僕、ずっと気になってたんだ。茅野さんのこと」
どき、と心臓が跳ねた。熱っぽいまっすぐな眼差しに吸い込まれそうになる。
「だから正直、今日のことはラッキーだったなって思ってる。話すきっかけになったから」
「若槻くん……」
思わず呟いた瞬間、彼の瞳がきらめいた。
「僕の名前、知っててくれたんだね。それって……ちょっとは期待してもいいってことかな」
「!」
「なんてね」
ふっと頬を緩める彼は、だけど冗談で済ませる気などさらさらないように見えた。
緩やかに逸らされた視線が名残惜しそうだ。
直感が勘違いなんかではないと、気づくには十分すぎる。