学校行事、部活動、様々なひと場面を切り取った瞬間の写真がページいっぱいに並んでいる。
眩しいほどきらめいているように見えて、蘇ってきた当時の温度感が肌を撫でゆく。
ほとんどの写真の中心に、笑顔を弾けさせるわたしが写っていた。
いまよりあどけなくて、いまより率直だった。
それに対して、若槻はほぼその姿を残していない。
写っていても画角の端か誰かの陰に隠れるようにしていて、その表情はどれも重く翳っている。
(これ、本当にあの若槻なの?)
きらきらした王子さまのような印象の彼とはどうしたって結びつかないほど、陰鬱で冴えない。
いまとはまったく対照的な、地味で目立たたない人物だ。
記憶の部分ではまだ曖昧だけれど、これらを見る限りそう言えた。
「こんなの気づけるわけないじゃん……」
病室で豹変し、悪態をついてきた彼にいまさら言い返す。
尖った気持ちでページをめくると、クラスごとの個人写真にたどり着いた。
「え」
知らないうちに落ちた声は引きつって凍えた。
6年2組。わたしの属していたクラスのクラスメートたちが名前とともに並ぶ中、異様な様相が広がっている。
番号順からして恐らく“茅野円花”とあったであろう位置の写真と名前が、油性ペンで真っ黒に塗り潰されていた。
悪意や憎悪しか感じられない。
衝撃と悲しみと怒りとが混ざって凝縮したような、透明度の低い感情が渦巻く。
もしやと思って中学校のアルバムの方も確かめてみると、まったく同じ状態だった。
「……何なの?」
相当な恨みを買っていることは、嫌というほど思い知らされた。
だけど、それでも彼との間に何があったのかを思い出すには至らない。
一方的に憎まれ、命を脅かされている状況に理不尽さを覚えつつあった。
ぱたん、とアルバムを閉じて元に戻す。
そのときついでに目に入った、先ほどのダンボールを取り出そうとした。
──ピンポーン
突然、鳴り響いたインターホンにはっと顔を上げる。
困惑と警戒を滲ませながら壁のモニターを見つめた。
(誰だろう)
ここへ来るとしたら若槻か、彼に関係のある人である可能性がある?
宅配便だったら肩透かしを食らうことになるけれど、とやや緊張しながらモニターを覗いた。
「えっ!?」
映っていたのは予想外も予想外の人物、菅原くんだった。