二週間後にはハルカはそんな遠く離れた地に行ってしまうの? じゃあ、もう帰り道に迷子のハルカを見つけることも、休みの日に出窓まで迎えにくることも、二人乗りであちこちを冒険することも、なくなるの?
ハルカと出会う前に戻るだけのはずなのに、ハルカがいない毎日を想像することが出来なかった。
あれだけ二人乗りを嫌がっていたはずなのに、後ろの重みがなくなった自転車を想像することが出来なかった。
ただただ混乱して動揺して、とにかく落ち着こうとしてカップに手を伸ばす。
ちゃんと掴んだつもりだったのに、手の力が抜けてカチャンとソーサーに落とした。中のお茶が跳ねて袖を濡らす。
「熱っ……」
紫色のシミがポロシャツにじんわりと広がっていく。キョロキョロと辺りを見回した。拭えそうなものは何もない。
そうだ、お手洗いは廊下の一番奥って。
おばさんの言葉を思い出して部屋を抜け出した。