今更そんなことを思い出す。
いつもあんな調子のハルカといるから忘れがちになってしまうが、ハルカは高級住宅街に住めるようなお坊ちゃまだった。
とにかくどうにも落ち着かなくて、そわそわとしながらハルカのお母さんが戻ってくるのを待った。
数分後、トレーにお洒落なカップとケーキを乗せて戻ってきたおばさんにほっと息を吐く。
それにしても、ハルカの家っていつもケーキが置いてあるんだ。
少し羨ましく思いながら、差し出されたカップを受け取った。初めて飲む変わった色の不思議なお茶に戸惑いながらも礼を言う。
おばさんが向かいのソファーに座った。にこにこと笑いながら私の顔を見つめる視線に耐え切れず、「顔に何かついてますか?」と話しかけた。
「ごめんなさいね、遥が言っていた通りの可愛らしい女の子だなあと思って」
ふふ、と口元を隠して笑ったハルカのお母さんに、飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。何とか飲み込み、胸を拳でとんとんと叩く。
「ハ、ハルカそんなこと言ってるんですか?」
「ええ、初めてあなたのことを話し出したこ時からずっと毎日。ミクは優しい、ミクは可愛いって」
目をぎょっと見開く。次第に顔がカーっと熱くなっていく感覚がした。
ハルカの馬鹿、私のいないところで何話してんのよ!
心の中で罵って眠っているハルカを恨む。
おばさんは手に持っていたカップをソーサーの上に置いて、姿勢を正して私を見つめた。