ハルカはその後も、何もなかったみたいにいつも通りだった。
学校帰りにハルカを見つけては後ろに乗せ、道端で合わなければ家の前を通った。出窓に腰掛けているときは立ち話をしたり、二人乗りで出かけたり。
まだ時折毎日が苦しくなる瞬間があるけれど、ハルカのそばは相変わらずいつも息がしやすかった。
ある日の学校からの帰り道、道端でハルカを拾わなかったので家の前を通ると、予想通りハルカが出窓に腰掛けていた。窓の下から名前を呼ぶ。
ゆっくりとこちらへ顔を向けた。今にも瞼が閉じてしまいそうな目でぼんやりと私を見つめている。
「ハルカ?」
「……ああ、ミク。こんにちは」
覇気のない声で、やっと返事をした。
「今日は外出かけなかったの?」
ぼーっと空を見上げて、返事をしない。
「ハルカってば!」
「……ん、ごめん。なんだっけ」
私から視線を外し、ぼんやりと宙を眺めるハルカ。
「だから、今日は外に出かけなかったのかって」
ハルカはぼんやりと宙を眺めたままで、まるで何にも反応しない。
「ねぇ聞いてる?」
少し苛立った声でそう返せば、ハルカはまたぼんやりと宙を眺める。そして暫くして、「ごめんミク」と返してきた。
「おれ、すごく眠くて、どうしようもないんだ。また今度でいい?」