ハルカを家まで送り届けた後、自転車を押しながら帰った。漕いで帰るにはまだ心の準備が整わないと思ったから。

カラカラとチェーンが回る音を聞きながら、自転車のライトが照らす先をじっと見つめる。


「未来……!?」


履き古した外履きのスリッパが照らされると同時に名前が呼ばれた。

ハッと顔をあげる。

顔を真っ赤にして首まで汗を流したお母さんと目があった。隣にはゼイゼイと肩で息をする高木さんが立っている。


「お母、さん」


私が呟くようにそういえば、お母さんは腰が抜けるようにその場にへなへなと座り込んだ。

高木さんが険しい顔をして大股でずんずん歩み寄ってくる。びくりと肩が震えてきつく目を閉じたその時。


「よかった……!」


汗だくの腕と震える肩できつく抱きしめられた。

触れる熱の温度も胸の硬さも肩の広さも、お父さんともお母さんとも全然違う。全然違うはずなのに、肩の力が抜けるような安心感はちゃんと同じだった。

驚きと困惑と後悔と嬉しさと。いろんな感情でごちゃ混ぜになった涙が溢れた。久しぶりに子供みたいに声を上げて泣いた。