ハルカが立ち上がって剣を構えた。見えない敵を「えいや!」と倒していく。
「そうかもしれないね。でもその辿り着いた先がゴールなのか、そのゴールが正しいのか間違っているのかは、ミクが好きに決めていいんだよ。間違ってたなら、また歩き出せばいいし、危なければ逃げ出せばいい。逃げ出して、体勢を整えて、また歩き出せばいい」
胸がいっぱいになって答えられなかった。
私はずっと、止まるきっかけが欲しかった。
「ね、ミク」
脳天をつんと突かれて、私は目を閉じたまま「……何」と返した。
「おれの黒ねこの幸せ貯金、ミクにあげる」
ハルカは私の右手にそれを握らせた。
ゆっくり瞼を上げていく。
途端、光が弾けた。視界いっぱいに広がる星空が目に染みて、思わず目を細める。深い夜空をじっと見つめた。見上げた空は雲一つなくブルーサファイアのように澄んでいて、どこまでも広く遠く青い。小さな星たちが瞬く。さっきまでは見えていなかったほんのわずかな光を放つ星たちが、煌めいて見える。
その時、視界いっぱいにハルカの逆さまになった顔が広がり、急いで仏頂面を作る。
「光った?」
わくわくした声で聞いてきた。
「……ハルカの顔で見えない」
「じゃあおれの顔、光ってる?」
「バカじゃないの」
ハルカの額にデコピンをお見舞いしてからゆっくりと起き上がる。
ゴシゴシと袖で頬を拭い髪についた葉っぱを手で払いながらもう一度だけ空を仰ぐ。