「お母さんは私のお母さんだけど、お母さんの人生があるでしょ。ちゃんと分かってるの。高木さんはすごくいい人だし、お母さんにも私にも優しくしてくれる素敵な人なの」


頭の中がぐちゃぐちゃだ。言いたいことが溢れ出して止まらない。

順番もめちゃくちゃに話す私を、ハルカは目を細めて見つめている。


「お父さんが死んでから、お母さんすごく泣いてたの。でも最近よく笑うようになって、多分高木さんのおかげなんだと思う。私ね、嬉しかったの。高木さんはお父さんと同じとまではいかなくても、お母さんを笑顔にしてくれるんだって。でもね」


また目尻がじんわりと熱くなる。


「私が、まだそこまで追いついてないの。ずっと走ってるのに、追いつけないでいるの。変わっちゃうことが、すごく寂しいの。すごく苦しいの。本当はお母さんのためにちゃんとしたいのに、全然できないの」


お母さんの幸せは心から願っている。

昔みたいにまた心から笑っているお母さんを見たいと思っている。なのに私が受け入れられないせいで、お母さんはまた悲しい顔をしている。

私さえちゃんとできれば丸く収まるはずなのに、たったそれだけのことがずっとできない。

できずにただ走っているとどんどん世界は先に進んで、ただずっと息苦しかった。


「どんなに頑張って走っても、どうしても追いつけないの」


そっか、とハルカが小さく呟く。握る私の手にキュッと力を込めた。