近くの河川敷まで自転車を走らせた。

夕日は自転車を漕いでいる間に沈んでしまって、あたりは真っ暗だった。会話はなく、私は足元に生えている短い草をブチブチとちぎっては投げ捨てる。自分の苛立ちをぶつけるように。

苦しい。全然息なんて吸えない。真っ暗で何も見えないだけの景色、だったらこんな場所なんかきたくなかった。真っ暗で汚い世界。


「あ、北斗七星発見。綺麗だねぇ」


空を見上げながら呟いたハルカが、のんびりとした口調で呟く。


「見てよ、ミク。あの星とあの星、繋げたら勇者の剣みたいに見える。綺麗だ、とっても」


八つ当たりに近い物言いで「黙って」と睨みつける。ハルカは怒るわけでもなく、いつも通りの呑気な顔で笑う。


「ほらミク、川に月が映ってる。月が泳いでるよ。こんな月が見れて、今日は良いことづくめだ」

「だから黙れつってんじゃん!」


抱えた膝に顔を埋めたまま叫ぶようにそう言った。ドクンドクンとまた溢れ出すドロドロの真っ黒が胸の底に溜まっていく。


「汚くて、面倒くさくて、クソ喰らえって思うくらい阿保らしい! 大っ嫌い大っ嫌い大っ嫌い! 良い事なんて何もない!」


目頭が熱くなってすぐに頬を雫が伝う。

顔を埋めたまま、ハルカにそれを気が付かれないようにと二の腕で強く目元を擦る。