わがままを言って駄々をこねるような歳じゃないし、受け入れないといけないのもわかっている。
“高木さん”はきっといい人だ。他人の家の子供の誕生日を祝うために駆けつけてくれて、並ばなきゃいけないケーキ屋さんのお高いケーキを買ってくれて。この前会った時だって、私が早く帰りたい顔をしたからわざとお母さんの映画の誘いを断ってくれたんだろう。
だからこそ私もこれまでお母さんとの関係を反対はしなかった。
別に毎年来る誕生日をそこまで特別に思っていたわけじゃない、この気持ちは本当だった。
地図を作って買い物に行っていつもより豪華なご飯を食べて食後にケーキが出てくるだけ。本当にそれだけ。
でもね、でも。
お父さんが作った誕生日探しは私にとってはずっと特別だった。
私たち家族がお父さんがいた頃から変わっていないことを証明してくれる唯一のもので、私なりに大切にしてきたものだった。
だからそこに他人を入れるのはまだ私にはできない。そこまで変わることは私にはできなかった。
むしゃくしゃして苦り切って、押さえきれない悲しみが遣瀬なく沸き立ってきて、靄のように不安が広がっていく。
まるで台風ように私の心の中は色々な感情をかき集め渦を巻いている。