お母さんはまだ帰っていなかった。


せっかくなら帰ってきてすぐに始められるように、先に準備も終わらせてしまおう。

そう思ってせっせと風船を膨らませてお皿や綺麗なグラスを並べる。お城の晩餐会みたいにフォークとスプーンも両側に並べてみた。

ハルカにもらった花束を深めのコップに飾ってテーブルの真ん中に置いてみる。

椅子に座って頬杖をついた。花びらをつんとつつけば頬が緩む。


その時、オンボロアパートのボロ階段を登ってくる足音が聞こえた。

ヒールがぶつかる音がするから間違いなくお母さんだ。

パッと顔を上げて立ち上がる。小走りで玄関へ向かい鍵を開けた。



「おかえりお母さ────」



ドアの前に立つ二人を見上げて言葉を詰まらせた。


「ただいま未来。遅くなってごめんね」

「未来ちゃんこんばんは。ごめんね、急に来ちゃって」


お母さんの隣に立つ“高木さん”に目を見開いた。