「どういたしまして。じゃあ、誕生日を探しに出発だ」
うん、と頷く。ハルカを後ろに乗せて自転車は軽やかに進んだ。
百円ショップでクラッカーと飾り付けの風船を買った。ハルカが髭と鼻のついた面白メガネを興味ぶかそうにかけていたのでこっそり写真を撮った。
駅前の本屋さんで欲しかった本を買った。偶然サイン本の最後の一冊で、ハルカと取り合いになった。もちろん私が買ったけれど、呆れるほど落ち込んでいたので読み終わったら貸してやることにした。
お惣菜屋さんで唐揚げの試食をもらった。ハルカがあまりにも美味しそうに食べるものだから、店員のおばちゃんが紙コップに三つおまけの唐揚げを入れてくれた。ハルカがひとつ多く食べて喧嘩になったら、おばちゃんがもう一つ追加で入れてくれた。
スーパーでちょっと高いジュースを買って、ケーキ屋さんでイチゴが山盛りのホールケーキを買った。
気がつけば前かごは山盛りで、ハルカにケーキとジュースを抱えてもらった。
自転車はどんどん重くなるのに、こころはどんどん軽くなる。足取りも軽い。大きく息も吸える。胸のどきどきはずっと続いていた。
日が暮れる頃に誕生日探しがやっと終わって、ハルカを家に送り届けた。
「楽しかったね、ミク。誘ってくれてありがとう」
「別に。ついでだったし」
「ついででも、嬉しかったよ」
いつでも素直になれるハルカがちょっと羨ましい。