声を弾ませたハルカに画用紙を見つめながら頷く。緩みそうになる頬をなんとか堪えて、平然とした態度を装う。


「でも寝坊したら置いてくから」

「どうしよう、それはかなりキケンだ。寝坊するカクリツはフィフティーフィフティーだ」

「名探偵らんぽの青井さんのセリフ、カッコつけて使うなし」

「フィフティーフィフティーだ……」


キリッとした顔をして言い直したハルカに思わずブハッと吹き出した。



結局誕生日の当日、ハルカは寝坊することなく私が迎えにきた時にはちゃんと着替えて用意を済ませて出窓に座っていた。

私が声をかけるといつもは「おはよ〜」とのんびり挨拶をしてのんびり降りてくるくせに、今日はドタバタと部屋を降りてきた。

玄関間から出てくるなり、背中に隠していた小さな花束を私に差し出す。目を丸くした。


「お誕生日おめでとう、ミク」


差し出された花束を反射的に受け取る。ハルカと花束を交互に見た。


「これ、なんで」

「あれ、違った? 一つ目は花束って書いてあったから。あそこで育てたお花なんだ」


ハルカは出窓を指差した。並べられたプランターのお花が半分くらいなくなっている。


「あそこにいてもいつかは枯れちゃうだけだけど、こうすればミクを笑顔にできるでしょ? だからもらって」


花束に顔を寄せた。爽やかで甘い匂いがする。


「……ありがとう」


堪えようとしたけれどできなくて、緩みっぱなしの頬を花束で隠した。