最後の「ごめんね」は言い慣れているような謝罪だった。おそらくハルカは、自分の病気のことで人に謝るのに慣れているんだと気づいた。


「迷惑かけてごめんね」


後押しするようにそういたハルカに胸がぎゅっと締め付けられる。

謝って欲しいわけじゃない。むしろ謝らないといけないのは、ちゃんと話を聞かずに決めつけた私の方なのに。


「いつも、どこでも寝るのは、そのせい?」

「ん、ごめんね」

「迷子になるのは」

「小さい時にこのビョーキになって、最近まではあんまり家の外に出なくなったから、道が覚えられなくて。ごめん」


また慣れた口調で謝った。


「先に、言ってよ」

「他人から急にそんな事言われたら、困るでしょ?」


へへと頬をかくハルカ。


他人、という言葉がやけに刺さった。悔しくて腹が立って、それ以上になぜかすごく悲しかった。

足元の石ころを蹴飛ばした。


「もしその……また眠りそうになった時は、ちゃんと前もって言って。後ろに乗せてる時に、またあんな風に倒れられたら心臓に悪いし」


拗ねた子供みたいな言い方になってしまい、少しバツが悪い。チラリとハルカを盗み見るとハルカはその目を丸くしていた。


「……いいの?」


予想外の返事に戸惑う。


「また、後ろに乗せてくれるの?」


どう答えればいいいのかわからずにただ一つ頷く。

するとハルカは二、三度瞬きをして俯く。泣きそうな顔で笑った。