恐る恐るハルカの肩を引っ張って仰向けにした。

息を呑んだ。落ちた時に額を打ったらしく前髪の下からポタポタと血を流している。

頭が真っ白になって呆然とそれを見つめることしかできなかった。


「……みく、」


名前を呼ばれてハッとした。

とろんとしたハルカと目が合う。まだ血は流れている。白い襟元が赤く染まっていく。


「きゅ、救急車……えっと、イチイチゼロ……あれ、どっちだっけ」


ポッケから取り出したスマホがからんと落ちた。手が震えている。


「……みく、まって……」


今にも目を瞑りそうなハルカが小さな声で私を呼ぶ。


「おくって……おうち、まで」

「いや……いやいや何言ってんの、救急車でしょ、病院でしょ」


救急車だから、そうだイチイチキューだ。電話の画面を立ち上げた。


「……だいじょぶ、だから……ふたりのり、おうち、おくって」


ハルカの目がどんどん閉じていく。


「いつも、こう、だから……おねがい」


ハルカは必死に目を開けようとしているのか眉間に皺を寄せた。力の入らない手で私のスマホを持つ手を握る。


「ふたりのり……」


それだけを言い残したハルカはまるで眠りにでもつくかのように静かに目を閉じて体の力を抜いた。
ばくばくと心臓が速い。

なんで、意味がわからない。いつもだからって何? 何で急に自転車から落ちたの?