「りんご、おれも好き。ずっと前に、ウサギに剥いてもらったことある。可愛くて大好き。……ご、ご。ゴールデンウイークの最後の日」
「ゴールデンウイークの最後の日って嫌いな人多いと思うけど。次の日から学校だし」
あきれ気味にそう言えば、「ぶー。ミク、ぶっぶー。ルール違反だよ」とハルカが笑う。
はあ? と顔を顰めながら、赤信号のためブレーキを掛ける。片足だけでは自転車を支え切れないので、サドルから飛び降りて自転車を支えた。
「好きなものしりとりのルールその一。好きなものしりとりは、相手の好きなものを貶してはいけません。さっきそう言ったでしょう」
「言ってないし!」
目を吊り上げて反駁する。あれ、そうだっけ?と首を傾げる気配がして深くため息を吐く。
勝手に始めたのはどこのどいつよと心の中で悪態を吐きながら、青に変わる気配のしない信号を睨んだ。
「分かった、じゃあルール教えるね」
ハルカがそう言った突端自転車が前後にゆらゆらと動きだし、何事かと慌てて踏ん張る。
振り返って確認すると、どうやらハルカが足をぶらぶらと揺らしていたらしい。
ハルカの背中を肘で突いて「危ない!」と怒鳴るも、当の本人はどこ吹く風で「ルールは三つあってね」と話し出す。
ハルカといると一生分の溜息を使い果たしてしまう気がした。
「ルールその一、相手の好きなものを貶してはいけません」
「それはさっき聞いたっての」