廊下をバタバタと走っているとお母さんも後を追ってきた。
「未来、今日は早めに帰ってきてちょうだいね」
残り半分のパンを無理やり口に詰め込んで、スニーカーの紐を結びながら「なんで」と尋ねる。
「ほら、前から話してた《《高木さん》》が……」
そこまで聞いて何の話をしたいのか理解した瞬間、反対足のつま先は無理やりスニーカーに突っ込み床に叩きつける。
続きを聞くよりも先にボロい鉄製のドアを開けて飛び出した。
「未来!」
お母さんが私の名前を呼ぶ。キュッと唇を一文字に結び階段を駆け降りた。
行ってきますは言わない。