約束の翌日になって、最寄り駅から四十分くらいかけて都心の大きな駅まできた。

“高木さん”は私たちよりも先についていて、待ち合わせに着くなり笑顔で駆け寄ってきた。

軽く挨拶をして、お昼ご飯を食べるお店に入った。私が好きなオムライスの店だった。

お母さんと高木さんは二人ではあまり話さなかった。やたら私の学校生活や好きなもののことについて質問してきて、たまに目を合わせて「僕たちの時代とは違うね」と笑い合う。

私が困らないようにそうしてくれたんだろうけど、それを見るたびにさっさと帰りたい気持ちが大きくなって最後のデザートは頼まなかった。


店を出て「映画でも観に行こうか」と言い出したお母さんに眉を顰める。しかし“高木さん”は解散を申し出てくれた。やっと帰れると心底安心した。

駅の改札までついてきた“高木さん”は膝に手をつき私と視線を合わせると少し困ったように笑った。


「じゃあね、未来ちゃん。今日はありがとうね」

「……はい。さようなら」


お母さんには「また連絡するね」と声をかけていた。見えなくなるまで“高木さん”は手を振っていた。

電車のドアが閉まって座席に深く腰掛け、やっと終わった気がした。たった数時間だったけど、私には丸一日のように感じる。


「付き合ってくれてありがとうね。ごめんね未来」


車窓の外を見つめている私に、お母さんは小さい声でそう謝った。

喉の奥がぎゅっと締まる感覚に眉を顰める。

その顔をお母さんに見られたくなくて、窓に視線を向けたまま「別に」と答えた。