戸惑いながら胸元のシャツを握る。

だってずっと魔女に呪いをかけられたいに上手く呼吸ができなかったはずなのに。

なぜか今この瞬間はすごく息がしやすかった。苦くない、ちっとも苦しくなかった。久しぶりにちゃんと息をしたような気がした。

なんで、どうして?

だっていつもと同じで、変わったことなんて何もないはずなのに。強いていうなら隣ですぅすぅと穏やかな寝息を立てるこいつくらいで……って寝息?

うとうとしているのは横目で見ていたけれど、いつの間にか本格的に寝入ったらしく、うっすら口角を上げて満足げに眠るハルカ。

怒りを通り越してもはや呆れの感情だった。


嘘でしょ? こいつ、私に置いてかれたら自分の家にすら帰れないくせに、こんなに堂々と寝るの?


すぴすぴと鼻を鳴らす寝顔に「本当に置いていってやろうか」と一瞬思案する。結局できないのが私なんだけれど。



もういいや、と隣に寝転んだ。色々考えるのも面倒臭い。


寝そべって見上げる空はさっきよりもうんと広い。