何でそういう言い方するかなこいつは。

そんなふうに言われたら、助けない私がまるで意地悪な魔女みたいになるじゃない。いっそのこと、本当に意地悪な魔女だったらこいつを黙らせるために大鍋でぐつぐつ煮込んでやれるのに。

額を押さえて最大級の溜息を吐いた。


「……マジで今回限りだから」

「わぁい、ありがとう」


人の話を聞いているのかいないのか、また前みたいに背中合わせで荷台に跨った。

いつもよりも二倍重いペダルを踏みしめた。


「ごめんね、ミク。お出かけの途中だったのに」


人の弱みに漬け込んで後ろに乗ってきたくせに、しおらしく謝られた。

これでまだいじけるのも私が悪いみたいでずるい。


「……別に。図書館行って、ごはん買いに外出ただけだし」

「もうお昼だもんね。おれもお腹空いたなぁ」


きゅるるとハルカの腹の虫がなって思わずプッと吹き出す。


「あ、笑った。ひどいなぁ」


多分ぶうたれているハルカを無視してペダルを踏み込む。するとどこからか香ばしい匂いが漂ってきた。元をたどれば、スーパーの横にある小さなプレハブのたこ焼き屋に行きついた。


「ミク、ミク! いい匂いだよ!」


シャツの背中を引っ張られて急ブレーキをかける。


「だから暴れんなって言ってんでしょ!」


荷台から飛び降りたハルカが私のハンドルを引っ張った。思ったよりも力があるようで自転車が進み屋台の前まで連れて来られる。